ベトナムのインターネット回線事情|海底ケーブル・5G・遅いときの対処法

ベトナム生活

ベトナム(特にホーチミン市)でインターネットを使う際に知っておくと役立つ情報を、在住者の視点でまとめます。海底ケーブルの構成、モバイル回線の現状、そして「遅い」と感じたときに確認すべきポイントです。

本記事は2015年の初稿以来、状況の変化に合わせて更新しています。最新更新時点の情報を記載していますが、回線速度や料金は契約プロバイダやプランによって異なります。


ベトナムの海底ケーブル

ベトナムの国際インターネット接続は、海底ケーブルに大きく依存しています。どのケーブルが使われるかは契約プロバイダによって異なりますが、全体像を知っておくと「なぜ遅くなるか」が理解しやすくなります。

海底ケーブルの配線は Submarine Cable Map で視覚的に確認できます。

現在運用中のケーブル

AAG(Asia-America Gateway) は2009年開通で、ベトナム南部(ブンタウ)を経由してアメリカ・香港・東南アジアをつなぎます。頻繁に障害が報告されるケーブルでもあります。

APG(Asia Pacific Gateway) は2016年開通で、ベトナム中部(ダナン)を経由し、日本と直結しています。これが開通してからは日本へのアクセスが格段に安定しました。ホーチミン在住の身としてはベトナム南部経由だともっとありがたかったのですが。

AAE-1(Asia Africa Europe-1) は2017年開通で、ベトナム南部を経由します。日本とは直結しませんが、香港からインド、エジプト、フランスまでの経路として機能し、全体のトラフィック分散に寄与しています。

TGN-IA(Tata TGN-Intra Asia) はViettelが運用する既存ケーブルです。

ADC(Asia Direct Cable) は2024年12月に運用開始された、ベトナムにとって最大容量の海底ケーブルです。Viettelが投資主体で、ベトナム中部(クイニョン)に上陸し、日本・シンガポール・香港・フィリピン・タイを結びます。最大容量50Tbpsで、開通前のベトナム全体の国際接続容量の125%に相当します。

SJC2(Southeast Asia-Japan Cable 2) は2025年7月に運用開始されました。VNPTが投資に参加しており、こちらも日本と直結します。設計容量は144Tbpsです。

SeaMeWe-3は2024年末に退役

1999年開通のSeaMeWe-3は、2024年12月に退役しました。元記事ではベトナム中部経由の主要ケーブルとして紹介していましたが、すでに運用されていません。

ケーブル障害はまだ起きる

私がベトナムに来た2013年から2015年頃は、海底ケーブルの断裂によるネットワーク遅延が頻発していました。経路の多様化が進んだことで、1本2本の障害では致命的な影響は出にくくなっています。

ただし、2024年6月にはAAG・AAE-1・TGN-IAの3本が同時に障害を起こし、ベトナム全土でインターネットが大幅に低速化する事態が発生しました。これを受けてベトナム政府は2030年までに海底ケーブルを15本以上(総容量334Tbps以上)に増設する計画を承認しています。

海底ケーブルが切れても日本-ベトナム間だけが影響を受けるわけではなく、切れたケーブルを通っていた通信が別ルートに流れ込み、結果として日本向けの通信も混雑する、という構造です。


モバイル回線(5G)

2024年10月、Viettelがベトナム初の商用5G SA(スタンドアロン)ネットワークを開始しました。続いてMobiFone、VNPT(VinaPhone)も5Gサービスを提供しています。

Viettelは2025年末までに20,000局以上の5G基地局を展開する目標を達成し、5G加入者は約1,000万人に達しています。料金はポストペイドで月額200,000VND(約6GB/日)から2,000,000VND(約50GB/日)まで。プリペイドも月額135,000VNDから利用可能です。

ただし5G対応端末の普及率は2024年時点でまだ17〜20%程度とされており、全員が恩恵を受けられる状況ではありません。政府は2026年9月までに2Gネットワークの停波を予定しており、4G/5Gへの移行が進められています。


固定回線のコスト感

法人向けの光回線は、日本と比べるとコストパフォーマンスが低いと感じます。日本では家庭用で論理値1Gbpsが月額数千円ですが、ベトナムでは数十Mbpsのプランで相対的に高い料金になることがあります。

ただし、論理速度はあてになりません。以前オフィスで契約していた60Mbpsプランでは、実測で論理値に近い数字が出ました。一方、100Mbpsプランでも実測10Mbps程度ということもあります。


ネットワークが遅いと感じたときに確認すること

契約回線のキャパシティ

安いプランで単純にキャパオーバーしている場合があります。自分で変更できるなら上位プランに切り替え、変更できない(家主管理の)場合はお願いしてみてください。

ルータのボトルネック

回線自体は十分でも、ルータの処理能力が追いつかないことがあります。まずルータを再起動してみて、一時的に改善するならルータ側の問題です。

Wi-Fi環境では、2.4GHz帯は家電や隣室のルータと干渉しやすく、速度が落ちやすい帯域です。5GHz帯に対応したルータに変えると改善する場合があります。サービスアパートでアクセスポイントを共有している場合は、自分ではコントロールしきれない部分もあります。

DNS設定

日本から持ってきた端末は、DNSが日本のサーバに向いている場合があります。ベトナムにいるのにDNSの名前解決だけ日本経由になっていると、初回アクセスが遅くなります。

DNSをGoogleの8.8.8.8/8.8.4.4、またはCloudflareの1.1.1.1に設定すれば、最寄りのサーバで名前解決が行われるようになります。

端末やアプリ自体の問題

回線もルータも問題ないのに遅い場合、端末のスペック不足やアプリの問題という可能性もあります。

接続先サーバが重い

そもそもアクセス先のサーバが遅い場合は、こちらでは対処できません。国内では気にならない程度の遅延要因でも、物理的距離が加わると積み重なって極端に遅く感じることがあります。


まとめ

2024〜2025年にかけて、ADCとSJC2の開通でベトナムの国際接続環境は大きく改善しました。5Gの商用サービスも始まり、数年前と比べるとインフラは格段に充実しています。

それでも海底ケーブルの同時障害リスクはゼロではなく、ベトナム政府も2030年に向けた増設計画を進めています。「遅い」と感じたときは、まずDNS設定とルータを確認するだけで解決することも多いです。