ベトナム人社員との仕事がうまくいくコツと留意点(現地法人・管理職向け)
ベトナム人社員との仕事でつまずきやすいのは、能力差ではなく「前提のズレ」です。
外国人として“違い”を意識しつつ、人としては“同じ”だという前提を崩さない。これだけで、衝突の多くは回避できます。
本記事は、ベトナムで子会社設立・現地法人代表として働いてきた経験を前提に、管理者・経営者目線で整理します。
1. 基本:違いを意識しつつ、根本は同じと理解する
ベトナム人社員と円滑なコミュニケーションを築くには、次の両方が必要です。
- 外国人だからこそ「違い」を意識する
- 外国人だからこそ、根本は「同じ」と理解する
環境が違えば、考え方も常識も違います。
たとえば生活設備(洗濯機など)ひとつ取っても、前提が違うことがあります。
一方で、相手を理解し、自分も理解してもらうように会話すれば、相手はあなたの考えを受け入れます。
問題は「言わなくても察する」前提で進めてしまうことです。
日本人もベトナム人も十人十色
管理職を経験せずに赴任すると、「自分の言うことを聞いてくれない」ことへの耐性が不足しがちです。
しかし、どこの国でも部下が思い通りになることはありません。
国籍ではなく、役割・期待値・評価の仕組み・コミュニケーション設計の問題として扱った方が再現性があります。
2. 会社設立時・赴任直後に踏みがちな地雷
日本の美化は禁物(=優越感はバレる)
赴任直後は、日本の便利さ・先進性を実感しやすく、無意識の優越感が出やすい。
ただし「日本がすごい」ことと「自分がすごい」ことは別です。
優越感があると、相手の合理的な理由を探さず、能力不足として片付けやすくなります。
すると相手は本音を言いづらくなり、ズレが固定化します。
実務の対策
- 「わからない」を前提に、背景・目的・制約条件を説明する
- 指示の粒度を上げる(期待値を文章にする)
- 「なぜ?」は詰問ではなく確認として使う
「正しい」を定義しないと揉める
会社設立時や赴任直後は、組織の“正しさ”が未確立です。
この時期に必要なのは、理念より先に「判断基準」を揃えることです。
- ルールを明確にする
- 経営者としての方針(何を優先するか)を明確にする
- 文書化が難しいなら、日々の判断で言語化して積み重ねる
上から目線に気をつける
ベトナム側から見ると、日本人は「先進国から来た人」「日系なら上司側」と見られやすい。
無意識でも、上から目線は敏感に察知されます。
よくある形は「なんでこんなことも分からないんだ」という苛立ちです。
その前に確認すべきは次です。
- それは自社(親会社)だけの常識ではないか
- 前提や背景を共有したか
- 相手の言語力(英語・日本語)に合わせて話したか
- 通訳に、意図まで理解させたか
「仕事だから仕方ない」は通用しない場面がある
労働者は労働契約に基づく存在であり、契約外まで無限定に求めると摩擦になります。
少人数では仕方ない局面もありますが、一定規模なら役割分担を明確にした方が組織が安定します。
上司部下の関係を業務外に持ち出さない
業務外での呼び出しや、仕事と無関係な頼みごとの強要は、関係を壊します。
さらに悪質なケースは、個人の不祥事に部下を巻き込むことです。会社名付きで評判が広がるリスクがあります。
3. 言語の問題:ベトナム語・英語・通訳の設計
最適解は「ベトナム語(少なくとも読み書き)」
人を挟むと、意図は必ず劣化します。
通訳の能力というより、間接伝達それ自体がリスクです。
業務で使う範囲のベトナム語なら、読み書きは習得難度が極端に高いわけではありません、という立場です。
英語でやるなら「口頭」を過信しない
日本人英語とベトナム訛り英語は、双方にとって聞き取りにくいことがあります。
口頭だけで進めるほど、誤解が増えます。
実務の対策
- 重要事項は必ず文章化(チャットで短文、箇条書き)
- 「結論→理由→次のアクション」の順で書く
- 通訳が必要な場は、先に“結論”と“依頼事項”を固定して渡す
日本語の「遠回し」を捨てる
異なる言語・異なる拠点では、推測が効きません。
遠回しに言うほど、中身が抜け落ちやすく、通訳も困ります。
4. 「ベトナム」という生活環境への配慮(納得感の作り方)
人件費が低い=同じ生活が安く実現できる、ではない
「ベトナムは人件費が安い」ことと、「日本と同水準の生活が安く実現できる」ことは別です。
家電などは同程度の価格で、相対的に負担が重くなり得ます。
このギャップが、給与の納得感や、駐在員待遇への感情にもつながります。
「日本人だから高い」が前面に出ると、不満が溜まりやすい。
実務の対策
- 給与テーブルの根拠(職能、成果、希少性)を説明できる形にする
- 昇給・評価の条件を、できる限り可視化する
- 不公平感が出る制度(曖昧な手当、裁量残業もどき)を避ける
家庭環境の影響を軽視しない
若い家庭では、配偶者の影響が強いケースがある、という観察です。
転職理由が給与に寄りやすいなら、次善策として「会社への安心感」を家族にも伝える工夫が有効な場合があります。
元記事で挙げられている例:
- 社員旅行に家族を招待する
- 「女性の日」に花を贈る など
やりすぎると本末転倒なので、あくまで状況次第です。
5. 宗教上の配慮(イベントを軽視しない)
ベトナムでは仏教徒のほか、キリスト教徒も多く、クリスマス(Noel)など重要イベントがあります。
その日に残業が重なることを「些事」と扱うと、関係性に影響します。尊重する、が基本です。
6. ベトナムで考慮すべき労務ルール(※要最新確認)
元記事にも「2018年5月時点」と注記があります。
ここは誤差が出ると危険なので、“原則”だけ押さえ、運用は必ず最新確認に寄せます(社労系・労務顧問・法務・会計事務所の確認を前提)。
祝日が週休と重なる場合:代休が発生する
祝日が週休と重なる場合、代休(補償の休日)が認められる、という整理が一般的です。
休日・祝日の割増賃金:最低ラインを把握する
最低ラインの目安(条文解説として一般的に示される水準):
- 平日残業:150%
- 週休(休息日):200%
- 祝日・テト等:300%
深夜労働の加算(少なくとも30%)なども絡むため、細部は社内の賃金設計と合わせて確認が必要です。
女性の休憩(生理・授乳)
- 生理中:1日30分の休憩(有給扱い)
- 12か月未満の子を養育(授乳等):1日60分の休憩(有給扱い)
元記事では授乳休憩が「30分」となっているため、この点は修正しておく方が安全です。
7. よくある俗説の整理(「ベトナム人は○○」の罠)
ウソ1:ベトナム人は目先の利益しか見ない
一括りにはできません。人によります。
「目先」の定義が曖昧なまま議論すると、理解に至りません。
ウソ2:給与は必ず共有される
共有される場合もあるが、100%ではありません。人によります。
若年層ほど起きやすい現象、という捉え方も可能です。
ウソ3:ベトナム人を叱ってはいけない
叱ること自体が禁忌ではありません。理不尽に叱られれば不満を持つのは、どこの国でも同じです。
ただし、言語差・前提差・相互理解不足があると、叱責が「人格否定」に見えやすくなります。
転職しやすい環境も相まって「叱ったら辞めた」が起きやすい、という構造理解は必要です。
まとめ:摩擦の原因は「国籍」より「前提のズレ」
- 違いを前提にしつつ、根本は同じと理解する
- 赴任直後は優越感・曖昧指示・業務外持ち込みが地雷
- 言語は「結論→理由→次のアクション」で文章化が効く
- 労務ルールは最低ラインだけ押さえ、運用は必ず最新確認





